Montessori Inspiration Weekendに参加して

2022年5月13日(金)〜15日(日)にかけて、オランダのデルフトにて開催された「Montessori Inspiration Weekend」に参加してきました。
オランダには、国際モンテッソーリ協会(AMI)の本部がありますが、オランダからだけでなく、イタリアやベルギー、リトアニアなど、ヨーロッパ各地より90人以上の参加者が集まり、共に学んできました。

合同会社カーサ・デ・バンビーニ 代表、NPO法人Scuola dei Bambini 代表理事 大谷育美

スピーカーは、0-6歳レベルにジュディ・オライオン先生、6-12歳レベルにカーラ・フォスター先生。お二人ともマリア・モンテッソーリ博士、モンタナーロ博士から学んだ直弟子で、AMIを代表する先生方です。現場経験も長く、モンテッソーリ教員養成のトレーナーや試験官も務めるなど、モンテッソーリ教育に深く貢献されています。

モンテッソーリ教育小学校レベルの学び

今回私が学んだのは、小学校レベルのカーラ先生の講義。まず感じたのは、3-6歳、0-3歳レベルのトレーニングコースで勉強してきたのにも関わらず、私はモンテッソーリ教育のほんの一部分しか知らなかった!ということ。そしてモンテッソーリ教育の小学校レベルでは新しい、さらに大きなモンテッソーリの世界が広がっていました。同時に、これは私たち大人にとって大きな「学びのパラダイムシフト」が必要になる挑戦であることを実感し、日本でそれが可能なのか?正直なところとても不安に感じています。

‘I wonder Why?’から始まる学び

子どもが「なぜ?」と言った時、その瞬間が学びのスタートになります。「なんでだろうね。調べてみる?」と子どもをこの世界の法則に誘います。この世界は、子どもたちが感覚を研ぎ澄ませ、多くの謎に入り込んでくるのを待っています。大切なのは、疑問や質問を止めないこと。子どもの「なんで?なんで?」攻撃に大人は時々疲れてしまいます

この「なんで?」の質問は5〜6歳を境にその質が変わります。それまではただ事実を知りたい、名前を知りたいだけだったのが、法則を知りたがったり、起源を知りたがったりするなどの深い疑問に変わってきます。その時にはただ答えを与えるだけではもったいない。調べ方や見つけ方を示してあげたり、特に有効なのが、外に出ていくことです。

Going Out!

これは、モンテッソーリ小学校レベルの大切なキーワード。全ては、外に出て探求することから始まります。外に出かけ、探求し、発見し、調べて、自分の言葉に置き換えていく。体験したことを自分の言葉で説明できるようになることがゴールです。

教室の中の受動的な学びとは180度違います。先生が前に立ち、子どもたちは一斉に50分間、先生の方を向いて座り、黒板板書、暗記…ただ一方的に与えられる学びです。

そうではなく、自ら発見し、自らの言葉を使って表現していくことこそが学びになるのです!

「自分で発見する」

学ぶことは辛いこと?耐えること?つまらないこと?大人がただ答えを与えてしまったらそうなるかもしれません。大人でも同じですよね。マニュアルに書いてあることをマニュアルの通りにこなす。でも想像してみてください。あるとき、「こうした方がもっと効率的だ!」とか「マニュアルを応用して、こうした方が上手くいく!」という自分なりの発見をした時、一気にモチベーションが上がる感覚を体験をしたことはありませんか?「自分で発見する」それ以上の学びはないはずですし、自分で発見した答えは、与えられた答えよりももっと意味をもち、最も納得できるものであるはずです。

モンテッソーリ教育の小学校にも問題集は存在します。しかしその問題集の裏や別紙に、解答集は存在しません。なぜなら、子どもたちは「正しい」答えを求めるために問題を解くのではなく、プロセスを理解するために問題に挑むからです。プロセスを理解すれば自ずと正しい回答に導かれるはずです。

本当の学びは「プロセス」の中にある

偉人たちの発見を追跡可能にすること。偉人たちの発見の過程を体験すること。そしてあたかも子ども自身が人類で初めてこの発見や体験をしたかのような経験をする。それがモンテッソーリ小学校の学びです。結果や結論を与えられ、それを覚えることが学びではありません。そのためには大人はどんな環境を用意し、何をどのように援助するか、一歩、いや三歩くらい下がって子どもの学びを「保証」する必要があります。

そうは言っても、日本で定められた全ての小学校課程のカリキュラムを網羅することができるの?という疑問が出てくるのは当然です。それに対する回答は「それ以上」です。

3-6レベルの教具と内容を全て網羅したとき、算数でいえば3、4年生レベルのことがもう終わっていることに気づきました。ただ形や形態、見た目が違うだけです。紙の上に書かれた数式か、または十進法ビーズを使って手で身体で物を操作して自分で導き出しているか、の違いです。

「試験の点数」や「学力を測る」ことは、大人の目には見えやすく判断しやすいものかもしれませんが、それらは一側面的な「結果」でしかありません。全ての学びと体験や感性を点数化することなんてできませんし、私たちはその考えから脱却しなければなりません。

実社会で必要になるスキルはどちらでしょう?角度や耐性などを正確にださなければならない建築士、薬剤の量を間違えずに投与しないといけない看護師など、特殊スキルを必要とする職業も確かにあります。しかし彼らは、作らなければならない数式と、そこから導き出さねばならない答えの内容(=プロセス)を理解しているからこそ、数字や数式のシステムに辿り着いているはずです。

大人も子どもも共に学ぶ。日常生活の中で

学びは、いつでもどこでも起こり得ます。私たち大人でも日々知らないことに直面し、知りたければ調べます。昨日まで知らなかった世界に、半歩、一歩踏み出し、新たな知識を得ていきます。

1年生から6年生まで、いつ、どこで、どのように、何を学ぶか、答えをただ与えられたり暗記させられたりして学ぶのか。はたまた自らの探究心に導かれ、少しのチャレンジを繰り返し、最適なサポートを受けながら、体験を通して自分のものにしていくのか。

私たちの知っている「学び」の世界=既存の「学校」システムという快適ゾーンから、勇気をもって一歩踏み出し、共に新しい世界を見てみませんか。

オランダの古都で世界的に有名な工科大学「TU Delft」があるデルフト